世界から猫が消えたなら/川村元気

本屋大賞ノミネート作品を読んでみよう第一弾。
嘘です。第二弾の予定はありません。


世界から猫が消えたなら

世界から猫が消えたなら


死ぬまでにしたいことは"10"もなかった。


猫が好きです。
実家で猫を飼ってくれないかしらという無責任な感じで好きです。
猫の名前は何にしようかしら。ワープロ、シャンプー、トラジ、ハイジ、国分……。


さて。


話題の本を読みました。映画プロデューサーの川村元気さんの初小説。
川村元気さんは「電車男」「告白」「悪人」「モテキ」「おおかみこどもの雨と雪」のプロデューサーさんらしいです。すごいラインナップですね。


設定と文体が『KAGEROU』と似ているような……?という読み始めでした。『KAGEROU』もなかなかおもしろかったですが、こちらの方が何倍も好き。


世界から猫が消えたなら
末期ガンが告げられた30歳の"僕"の前に、"僕"と同じ姿をした"悪魔"が現れた。
"僕"は明日死ぬ。でも、世界から"何か"を消せば、"僕"の寿命は1日延びる。
猫の"キャベツ"と一緒に過ごす一週間の物語。


猫は"キャベツ"と"レタス"が出てきます。
"キャベツ"がとにかくかわいかったです。キャベツって名前も良いなぁ。白菜はどうかなぁ。


朝食を食べた後、コーヒーをもう一杯飲みながら、ゆっくりと本を読む。電話がない生活。素敵だ。なんだか急に時間が縦に伸びて、空間が横に広がったような気がする。


世界から電話が消えたなら
世界から映画が消えたなら
世界から時計が消えたなら
世界から猫が消えたなら
世界から僕が消えたなら


この小説がある種の哲学書だと言われていた意味がよくわかります。
人間の存在した証のお話は本当に良いお話だった。それでいて感動させてやろうというあざとさを感じさせないような、ほのかに良いお話でした。


文章は勢いがあってわかりやすい。
本を読むのが苦手な人でも読みやすいのだろうと思います。
もともとスマホアプリのLINEで配信されていたらしいですし。
高校生が携帯で読んでいる姿が目に浮かびます。それにしてもLINEって……。


たぶん、ありがちな物語。たぶん、ありがちな感動。
でも、品のある考え方が素敵なのです。押しつけのない哲学が染みます。


出てくるのは人と猫と悪魔。
悪魔が匂わせていた神様は、きっと川村さんのことだ。