日傘のお兄さん/豊島ミホ
昨日、選考の待ち時間に読んだ本です。
変わった会社で、待ち時間は本を読んでいてくださいとの事前通達がありました。
私は面接を受けたあと2時間程待ってテストを受けたので、リラックスして読めました。面接と違ってテストはそわそわしません。結果が来るまでそわそわしています。
「あわになる」
主人公は浮遊霊です。
イメージよりもままならない浮遊霊(歩かないと移動できない。念を送ることもできない)として生き(?)ながら、初恋の男性に辿りつきます。
しっとりした良いお話だと思っていたら、結末は予想以上。懐の深い女性ってかっこいい。少し悲しい結末かもしれない。でも幸せな結末です。
「日傘のお兄さん」
表題作。映画にできると思いました。
幼い頃一緒に遊んだお兄さんと再会し、ロリコン疑惑のお兄さんとの逃亡劇。
純愛と呼ばれるものはえてして歪んで描かれますよね。
なっちゃんの側から読んでいるから、応援したくなるなっちゃんとお兄さんの恋。でも傍から見たらロリコンニートと中学生の危ない恋。
無条件で友達を応援したくなる気持ちと似ていると思いました。
お兄さんはロリコンなのか。小さい頃、どうしていなくなったのか。
私のイメージでは、お兄さんは美少年です。それはつまり、何をしても許されるということ。結末には感動してしまいました。それでいてくすっと笑える物語。がんばれ、お兄さん。
「すこやかだから」
すこやかという単語は時にエロい単語なのだと知りました。
すこやかな小学生の物語です。私はもう少し女の子らしくならなければ、と思いました。
「ハローラジオスター」
大学生って色々ですね。
小説で見るとノブオに惚れてしまうけど、現実だったらちょっと無理。
めげないちゃんって怖くてかわいい。
ノブオがノブオでなくなった瞬間、嬉しいよりも寂しさが勝ってしまいました。
しかし、就活話が出てくるとは思ってもみなかったので、心が少し折れました。
この短篇だけは帰りの電車で読んだのでね。電車に乗る前にお祈りメールを受信していたのでね。ははん。
憤死/綿矢りさ
心の闇へ誘う4つの物語
こんなポップな装丁で
なんてホラーな物語なんだ。
「おとな」
たった5ページの物語?エッセイ?なのに、インパクトは長編並。
これが実話でもそうでなくてもどちらでもいいけれど、『憤死』を見たら私はこの「おとな」を思い出すだろうなぁ。
「トイレの懺悔室」
子供の頃の思い出と、大人になってからの心の闇。
子供と大人の上下関係が、大人と老人になって逆転することに私は違和感を覚えます。小説には歪んだ人が多いけれど、現実は?なんて良い人なんだろうと思っている人が壊れているなんて、そんなのは見たくない。
「憤死」
綿矢りさだーーーーーー!!!
と思いました。おもしろかったです。
「人生ゲーム」
これもおもしろかったです。
このジャンルは「ホラー」で良いんじゃないかな。
私は人生ゲームで銀行をやりたがる性質です。今の子供は人生ゲームやらないの?だとしたら寂しいなぁ。あんなにおもしろくてえげつなくて大人なゲームは無いじゃない。
ゴッホの絵を買うことに喜びを感じるにはまだまだ遠い。
ガソリン生活/伊坂幸太郎
望月家のみんなを乗せて
緑デミオは今日も走る!
車に詳しくない私ですが、「ゴールデンスランバー」の主要メンバー、カローラさんが登場したときは嬉しかったです。しかし『オー!ファーザー』のメンバーが出てきたのは嫌だなぁ。名物にもなっている作品リンクだけれど、ストーリーに関係ないならやめてほしいです。カローラくらいの小さなふふふが良い。
朝日新聞で連載していたものを加筆修正の上、書籍化。
私の母は読んだのかなぁ。読んでなさそうだなぁ。
伊坂さんの小説には変わったことを言う人が多いから、鼻につく人もいるでしょう。けれど私にとっては自分では考え付かないユーモアで溢れていて心地良いです。相変わらず伊坂さんはエンターテイナー。
ある女性芸能人を乗せたことから、事件に巻き込まれていく望月家。
巻き込まれていくような、巻き込まれに行っているような。
母一人子三人の望月家で一番頼りになるのは小5の次男、亨。
亨が頭良くて生意気でとってもかわいいです。
長男良夫も、お母さんも、長女まどか(は、そうでもない)も、隣の細見氏も。どこかかわいい人間たちのほのぼのミステリーです。主人公は緑デミだから、車の中での会話でしか事件のことを知れません。緑デミと一緒になって、読者も思う。「車の中でやってくれ……」
ストーリーも伏線回収もおもしろかったです。
特にラストはありきたりながら感動してしまいました。亨……!
小説自体は長いけれど、スイスイ読める一冊です。
やはり伊坂幸太郎はおもしろい!
ハッシュ!
2002.シグロ
director:橋口亮輔
script:橋口亮輔
cast:田辺誠一、高橋和也、片岡礼子、秋野陽子、冨士眞奈美、つぐみ、*加瀬亮 and more...
21世紀的、子作り宣言。
個人的ベストシーンは蕎麦屋のところです。
若き日の加瀬さん、無愛想な店員を演じる。素敵でした。
「ぐるりのこと。」の橋口監督、昔の作品です。
「ぐるりのこと。」をDVDで観たときは、木村多江さんファン邦画ファン「ぐるりのこと。」ファンの男の子と夜通し語ったものです。関係無いけれど彼は「ゴールデンスランバー」を映画館で7回観たという強者です。
田辺さんは「11人もいる!」「ハッピーフライト」のようなちゃらんぽらんな役が好きだから、今回は好みではなかったし、加瀬さん以外に好きな役者さんはいないし、期待は全くしていなかったけれど、映画自体がおもしろかったです。
ゲイカップルの中に、子供が欲しい女性が加わった3人の物語。
結末が私の考えていたものとまーったく違くて良かったなぁ。
友達だったら100%「やめろ」と言う決断だけれど、短絡的で嫌いじゃない。映画だからかな。現実だったら、「子供の気持ちになりなさい」と思う。
痴話喧嘩って他人から見るとしょーもない。
そして大概、怒っているほうがしょーもない。
同性愛者の切なさが垣間見える映画でした。覚悟ってすごい。
3人の未来が楽しみです。
あーんなに仲良くなっても、人工授精なのかなぁ。
それともあるいは…はたまたあるいは……?
アニバーサリー/窪美澄
3.11
東日本大震災の記憶は新しいものの、すでに2年が経過しているという事実。
当時生まれた子供たちが、2歳を迎えようとしていること。
「母」の小説をあまり読んでこなかったので、窪さんの小説を読むといつも自信がなくなります。この分野において、私は欠陥していると思うから。
戦争を生き抜き、母と仕事を両立させる晶子。
戦争を終えたくましく生きた仕事人、千代子。
母でありながら、仕事と両立させることができなかった真希。
母を苦手とし、仕事も恋愛もうまくいかない中、震災と同時に母になった真菜。
晶子と真菜がメインの物語だけれど、色々な女性と母がいました。
女と母親を両立させることは今の時代でも充分難しいのであろう。
さて、もうすぐ22歳の私、この先どうなっていくのかな。
暗くて悲しい真菜の物語のなかに、晶子というひとすじの光が差します。
晶子はいまどき珍しいくらいのおせっかい。正直私は、煩わしい。
それでも頼りたくなるときは頼りたいのも事実。
いくつになっても、年長者はなんだってできると信じています。
人生の先輩は尊敬できない人も多いけど、その何倍も、尊敬する人だらけ。
カメラを手に入れるため、友達を失わないため、男を相手にする真菜。
真菜の親はたしかにひどいとは思うけど、結局のところ、真菜がバカなんだな。この先、真菜の娘の絵莉菜はどう育っていくのでしょう。私は母になる自信もやる気も無いので、千代子の言葉が嬉しかった。
窪さんの小説家デビューは数年前。
綺麗事とそうでないことが入り混じった小説。
晶子の言葉が一番窪さんだと思いました。
アニバーサリー、記念日。
タイトルに付けた意味を感じるには、私はまだまだ若い。
プラチナデータ
全国的に春休み。加えて水曜日。
レディースディの無い映画館に行ったのに、たくさんの人がいました。東京の天気は雨だったのに。なぜ。そんなわけで、水曜日に「プラチナデータ」を観てきました。
ジャニーズさんの肖像権の厳しさには虫酸が走るわぁ。
2013.東宝
director:大友啓史
script:浜田秀哉
novel:*東野圭吾『プラチナデータ』2010.幻冬舎
cast:二宮和也、豊川悦司、鈴木保奈美、生瀬勝久、杏、水原希子、遠藤要、和田聰宏、中村育二、萩原聖人 and more...
やはり神楽の役はニノではなく玉木宏だと思いました。
私は二宮さん好きだけれど、いかんせん背が低いんだもの。杏に凄むとき、下から睨むんだもの。玉木さんのほうが天才にも不安定にも見えるから良いと思う。「MW」みたいな感じで。
まぁそれはいいとして。
原作が東野圭吾さんだから、読んでから観る人も多いと思います。私もそうです。前半、いきなり「ん?」となりました。あ、これはネタばれでは無いと思います。
神楽「プラチナデータ」
ん?プラチナデータの意味が違くないかい?
オープニングはかっこよくなるけれど、原作の「プラチナデータ」はどうなるんだい?
神楽「真のプラチナデータって一体なんなんだ!!!」
そうきたか。
原作が先だから原作の方を良しとする気持ちがあるのは認めます。認めた上で、後半に「プラチナデータ」が出てきたほうが私は好きです。
原作と映画はなかなかに違いました。
特に私が原作で一番好きだったスズランと神楽のシーンが無かったのはショックでした。スズラン自体が出てこなかったのだけれど。
原作は長編小説。
丁寧に映画にするのは難しいのでしょう。削るとこ削って変えるとこ変えるのもわかります。だけど。展開は早く、後半は間延び感。それぞれの心情の描き方が足りず、浅間(豊川悦司)はなぜ神楽と協力しようと思ったのか、など、納得できないものが多かったです。
決着の付け方も「えー……」って感じ。
原作のハラハラ感が無かったなぁ。それもそのはずなんですけどね。結末が違ったんですもの。なぜ、それを、クライマックスにしたんですか。何もかもが中途半端だったように感じられました。
映画は、なかなかおもしろかった。
なのに酷評してしまうのは、もっとおもしろくできたでしょうと思うから。
そんななか、前半の逃走シーンは素晴らしかったです。
さすがジャニーズさん。運動神経が半端なかった。
それでもやっぱり、もっとおもしろくできたでしょうと思わずにはいられません。
劇場の雰囲気もそんな感じでした。照明が付いた瞬間、あちらこちらから疑問符が浮かんでいたように思います。
ストロベリーショートケイクス
2006.アップリンク、コムストック
director:矢崎仁司
script:狗飼恭子
comic:魚喃キリコ『strawberry shortcakes』2002.祥伝社
cast:池脇千鶴、中越典子、中村優子、岩瀬塔子、加瀬亮、安藤政信 and more...
痛々しくて、いとおしい彼女たちの"選択"
そんなつもりは毛頭ないのに、またもやR15作品……。
女優のおっぱいの必要性が私にはわかりません。
フリーター、デリヘル嬢、OL、イラストレーター…立場の違う4人の女性の物語です。恋愛映画らしいけれど、恋愛というよりは、女性という不安定さを感じました。私は拒食症を見るのが本当に苦手です。食べても良いけど吐かないでほしい。
中越さんと加瀬さんのカップルが好きだなぁ。現実に付き合っていて欲しいくらい。でも、加瀬さんが冷たくなるとめちゃめちゃ怖かった……。恋人の気持ちが離れていく様子って他人事でも哀しくなります。
イラストレーター塔子の場面が良かったです。美しくてかっこいい。誠意の無い出版社の対応には塔子と同じように怒る自分。あんなんでも正社員になれるんですか……。これは就活生のつぶやきです。
神様の絵、私も欲しいなぁ。
不安定な女性はたしかに痛々しい。でも、その痛々しい部分を外では隠すのが女性なのだと思いました。この映画、男性が観たらどう思うのでしょう。「バカみたい」「情けない」あわよくば、「でもかわいい」と思う男性がいるといいなぁと思います。
そんなのさ、見下されてるって思うほうが悪いんじゃないの
塔子の言葉がグサリと刺さる。
ところで、役者の名前と役名が共に岩瀬塔子。どういうことかと思いきや、なんと、原作者の魚喃キリコさんらしい。すごい!普通に女優さんだった!しかもおっぱい出してる!すごい!
さて、いちごのショートケーキ、食べようっと。