九つの、物語/橋本紡

やはり、順番とか関係なく、本を読んだらすぐ更新するのがいいですよね。
というわけで、今日読んだ本のお話です。


◆九つの、物語/橋本紡

九つの、物語

九つの、物語


初めましての作家さん。バイト仲間に薦められ、貸してもらいました。
『流れ星が消えないうちに』(だっけ?)とか、タイトルを見て気になってはいたのだけれど。


読書家兄妹の、不思議な物語でした。
九つの文学作品を読みながら、死んだはずの兄と、生きている妹がごはんを食べたり、本の感想を言い合ったり。死んだ人間の物語はよくあるけれど、幽霊?たちが生き生きしていたのが印象的でした。その気になれば生きている人と話せたり、見える人間を選べたり。


仲良し兄妹のやり取りが微笑ましい。それとも、成人越えた兄妹なんてこんなものかしら。でもこの二人はずっとそうだったような気がします。やたらモテるお兄ちゃんは、妹の女心も理解できていそう。


お兄ちゃんの考え方が好きでした。楽観的!
一緒にいて疲れる女の子とは根本的な部分が違う→それを超えて仲良くなれたらすごく貴重なことだ! 人付き合いをこんなふうに考えられる人は素敵ですよね。ただ、私はこのお兄ちゃん無理かな(笑)どんな女性とも仲良くできるらしいけど、私だったらうわべだけで。


私が好きなのは、妹ゆきなの恋人、香月くんのほう。小説に出てくる男性は、いつも知的な人に惹かれます。知的で、品があって、教養のある人。文章で読んでいるからかな。ゆきなが読んでいる本に、しっかり興味を持ってくれるところも良い。田山花袋の花袋が読めない紺野くんよりよっぽど好き。でも現実に惹かれるのは、紺野くんのほうかしら。いや、花袋は読めてほしいなぁ。


とても読みやすい文章で、読了まで2時間しかかからなかったけれど、素敵な文章や考え方がたくさんありました。


手を繋ぐのもいいけれど、腕を組むのもいい。彼の腕にしがみつくのは、もっといいだろう。でも今は、手を繋ぐだけにしておこうと思った。
なんだか、もったいない気がしたからだ。

「せいぜい優しくされておきなさい。その代わり、いっぱい、気持ちを返してあげなさい」

ああ小説とは、と思った。どこかの誰かが書いただけの話。まったくの作り物。それがなぜか、これほど絶妙のタイミングで、心に飛び込んでくる。


ゆきなが気にしている両親とのエピソードが少し弱かったのが残念です。何より母親が不可解すぎました。めちゃくちゃな理屈、ゆきなが言っている以上に、めちゃくちゃな理屈でしたね。呆れた大人だわ。子供というのも、子供に失礼なくらい。


作中には、お兄ちゃんが作る様々な料理が出てきます。小籠包とか、パエリアとか。お兄ちゃんすごいな、って感心するばかり。しかもレシピが具体的なのがすごい。この本を薦めてくれたバイト仲間にごはんを作ってあげたことがあるのですが、ここに出てくるトマトスパゲッティを作ってほしいと言われました。大学生の一人暮らしの家に、あんな聞いたこともないスパイスがあるわけないでしょが。と思いました。無理な話だわぁ。