お友だちからお願いします/三浦しをん

◆お友だちからお願いします/三浦しをん

お友だちからお願いします

お友だちからお願いします

「お友だちからお願いします」って、どういう言葉なのでしょう。
「付き合ってください」「お友だちからお願いします」が、模範的?
そもそも私はお友だち以下の人に「付き合ってください」と言ったことも言われたこともない。


「お友だちからお願いします」と言われたい(言いたい、でないのは私にそんな勇気があるとは到底思えないから)シチュエーションを考えてみました。私はこういう妄想をよくします。


「お友だちからお願いします」ということは、お友だちでない人というのが大前提。知り合ってしばらくしたときに「お友だちからお願いします」と言われたら、「え、友達じゃなかったん?」と衝撃を受けるか、「いや、無理だからこの距離感でしょ」と思うかのどちらかな気がします。


「お友だちからお願いします」は、やはり初対面の方から言われたい。それが異性でも同性でも素敵な人からだったらいい。そもそも初対面で明るく「お友だちからお願いします」と言うような人は私基準でかなり素敵。もちろん「お友だちから」発展することを期待するような「お友だちからお願いします」ではなく、段階を踏むような、少しずつ仲良くなっていきましょー的な礼儀を感じる「お友だちからお願いします」が良い。


「お友だちからお願いします」を連発しているのは、単に引っ込みがつかなくなったというのもあるけれど、この言葉が気に入ったからです。書店でこの言葉を見たときに、先ほど言ったような、素敵な「お友だちからお願いします」に聞こえたのです。三浦しをんさんから「お友だちからお願いします」と言われたら、「いやいや、こちらこそ、恐縮です」と、普段なら絶対やらないのにあまり知らない作家さん(初対面ではないわけですが)のエッセイ集をハードカバーで買いました。なんて、かっこつけてみたけれど、半分は残り一冊だったサイン本に目がくらんだからです。いや、目がくらんだっていうのは失礼な言い方ですけどね。


思いがけずここまででたくさん書いてしまった。さて、何から書きましょう。


私が既読の三浦しをん作品はこちら。
まほろ駅前多田便利軒
・私が語りはじめた彼は
舟を編む
・格闘する者に○
うーん、直木賞受賞作と本屋大賞受賞作で半分を占めるあたり、ミーハー感丸出しですね。


これしか読んでいないのに、エッセイ集を買うとは、自分でも驚きです。
特に、女性作家さんのエッセイは豊島ミホさんの「やさぐれるには、まだ早い!」しか読んだことがないのです。エッセイになると文章が軽くなる作家さんが多いような気がして、その普段読んでいる文章とのギャップにより品が損なわれるような気がしてしまいます。男性なら良いのだけれど、女性だとなんか嫌だ。なんか嫌だ、って思うのだから、なんか嫌だ。


でも、エッセイは嫌いじゃないです。作家さんが身近に感じられるから。その意味では、このエッセイは良かったです。説教臭さなど微塵もなく、噴き出すようなエピソードもありましたしね。個人的には、三浦さんが使っている路線が私と一緒だったので、いくつかの話への共感が嬉しかったです。東京に出てきて嬉しいのは、本やテレビで見る東京が、私の知っている東京になったということです。


「スパイごっこ」の冒頭の紙が好きだという話とか、三浦さんの思考を知るのは楽しかったです。自分に似たとこがあったり(大抵ダメ人間エピソード)変なこだわりを知れたりね。あと三浦さん原作の映画「風が強く吹いている」は観たので、その話が聞けたのが嬉しかったです。


ただ、終始一貫して軽いエッセイだったのが残念です。そういうのも好きだけど、時たま良い話なんかがあると、私の好みドンピシャだったんですけどね。母親に殺意を抱く「理不尽の権化」なんかは、どうしたって好きになれませんでした。紙面に書かれるとちょっと、ね。


それにしても、「お友だちからお願いします」という言葉の威力がすごいなぁ。誰か言ってくれないかなぁ。初対面なんてそうそうないけれど。
ちなみに、これを読んだあとに三浦さんに「お友だちからお願いします」と言われたら、「考えさせてください」と言いたいと思いました。てへ。
三浦さんの、『舟を編む』のようなお仕事小説がもっと読みたい。探してみよう。とはいえ、読みたい本も積読本も溜まる一方。いつの話になるやら。