【新釈】走れメロス 他四篇/森見登美彦

新釈 走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇


森見作品を一気に読んだった!
私にとってこれは奇跡に近い。


山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」をそれぞれ【新釈】した短篇集です。それぞれ独立してはいるものの、登場人物がかぶっているので一気に読むことをおすすめします。


詭弁論部、図書館警察、パンツ番長戦、猫炒飯などなど。森見作品にはお馴染みのフレーズが多数登場します。初めて読んだら奇怪で新鮮ですし、馴染みの読者にはぷぷぷと笑える。けれど、「またか」と思う方もいらっしゃるのかも……。ちなみに私は、「ぷぷぷ」と「またか」の中間です。樋口師匠なら何度出てきても嬉しいんだけどなぁ。


【新釈】について。
恥ずかしながら、「山月記」「走れメロス」しか読んだことがありません。「百物語」はなんとなく知っている程度、他二篇は全くです。【新釈】というか、森見作品特有の底辺大学生だったら、というパロディですね。おもしろかった。


私が好きなのは「藪の中」でした。一番森見作品っぽくなかったからかしら。『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半神話体系』も好きだけれど、『恋文の技術』『ペンギン・ハイウェイ』が最近のお気に入り。色々書いてくれるのが嬉しいです。『ペンギン・ハイウェイ』文庫化しましたね。是非ご一読を。まさか森見さんに泣かされるとは思いませんでした。


森見作品が好きな人なら安心して読める短編集でした。苦手な人でも、好きな一篇が見つかるかも。「藪の中」はなんだか青春小説でしたよ。


現在作家活動をお休み中の森見さん。
Amazonマトグロッソで連載していた『熱帯』を読める日が楽しみです。