残り全部バケーション/伊坂幸太郎

明日はテストです。勉強はまだしてません。
明日はテストです。読みたいから、本を読むのです。
残り全部バケーション、私もそうでありたい。


残り全部バケーション

残り全部バケーション


伊坂幸太郎さんの作品は全部読み続けていますが、ひとつ前の『夜の国のクーパー』は読んでいません。手元にはあるし、冒頭は読んだのですが、続かないまま次が出たので、抜かしてしまいました。『夜の国のクーパー』を読むのはおそらく夏頃かなぁ。


◆残り全部バケーション
久しぶりに、短編集を読んだ気がします。
裏の仕事をしている溝口さんと、コンビを組む人々の物語。ラストにブワッと盛り上がる小説です。感動もしたし、興奮もしました。良いなぁ。私、このラスト好きだなぁ。


◇残り全部バケーション
伊坂さんの女の子目線は珍しいような。この短篇おもしろかったなー。伊坂幸太郎が好きな人は読みましょう、という感じ。変な表現かもしれませんが、本当、そんな感じ。
明日からバラバラになる家族と、裏の仕事をやめた岡田さんが、なぜかドライブをするのです。岡田さんの人柄がとても良く、この短編集には溝口さんとコンビを組む人が何人かいますが、溝口・岡田が一番良かったです。
家族の中では、お母さんが好き。母は強し、と思いました。強さの見え方は人それぞれ。
「岡田さん、何してる人?」
「さっきもお父さんに訊かれたけど、今日、仕事をやめたばかりなんだ」
「無職?」
「そう」
「駄目じゃん」
「駄目じゃないよ。明日から、もう俺の人生、残り全部、バケーションみたいなものだし。バカンスだ」

日常の中の非日常。能天気さが、羨ましい。
溝口さんの言葉はどれもなかなかに失礼で好きだ。


タキオン作戦
伊坂さんの考えるSFはわかりやすくて好きです。今回はSFなわけではありませんが、岡田さんがのタキオン作戦がSF作なのです。「残り全部バケーション」で岡田さんが話していた、溝口さんとの思い出のお話です。馬鹿げたことを本気でやる人はたくさんいるけれど、馬鹿げたことの種類が、高尚なのが岡田さん。これを読むと、溝口さんは岡田さんが好きなんだなぁと微笑ましくなります。


◇検問
岡田さんとコンビを解消したあと組んだ、太田さんとのお仕事です。下請けをやっている2人は、頼まれて30代の女性を誘拐します。太田さんは図太いなぁ。
短篇版「ラッシュライフ」みたいでした。拳銃が出てくるから?我ながら安易。規模の大きい犯罪をなんでもないように書くから、逆に事の重大さを意識するような。誘拐された女性がおもしろかったなぁ。もっと続きが読みたいと思いました。


◇小さな兵隊
岡田さんの幼少時代の物語。ふふふ。
おもしろかったし、伊坂さんらしい展開だったけれど、子供が主人公なのは苦手だなぁ。「オーデュボンの祈り」以来の物騒な展開(と私は思った)が少し受けつけなかったです。伊坂さんはいつでもライトで軽快でエンターテイメントが良い。


◇飛べても8分
「検問」「小さな兵隊」で組んでいた太田さんとコンビを解消し、次の相方は高田さんです。これまで掴みどころのなかった溝口さんが最高にかっこいい。ぼーっとしながら読み進めていたので、油断していたら急展開がきました。迫力があってドキドキしました。ドキドキしながらラストまで。終わりよければすべてよし。ずっとよかったけれど、終わりはよすぎました。爽快。


◆残り全部バケーション
伊坂幸太郎さんはとても売れっ子で知名度も高い作家さん。そのためあまり好きだと言いたくないし、「私も(僕も)好きだよ」な会話がときどき煩わしい。
でも、伊坂幸太郎さん、好きです。